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めぐりめぐる。

落語や漫才を見るのが好きです。エンタメ系の記事を中心に、幅広く書きたいことを綴るブログです。メールでのお問い合わせはこちら「infomeg2@gmail.com」

転職エージェントと僕

雑記

三日に一度くらいだろうか、定期的に転職エージェントから電話がかかってくる。

 

「にゅーとんさん、良い知らせと悪い知らせがあります。まずは悪い知らせからご報告します。」

 

本当に冗談抜きでこういう話し方をするのが僕の専属のエージェントだ。ちなみに良い知らせを先に聞くとか、そういった裁量を僕に与えるつもりは一切ないらしい。必ず悪い知らせから僕に教えてくれる。少しばかり申し訳なさそうに、少しばかり励ましをこめて、残りは義務的に。僕と転職エージェント(女性である)は友達ではないので、妥当な配分ではないだろうか。たぶん失業者に連絡する時の感情の込め方のレシピみたいなものがあるのだと思う。なんだか彼女の話し方は料理番組でレシピを淡々と紹介する時のお姉さんのそれに酷似しているからだ。ただし3分クッキングではないので一方的な通告では済まない。僕に次のアクションを取らせないことには彼女にはフィーが入らない。僕にできるだけ早く、スマートに就職を決めさせることで彼女の仕事は成り立つ。だから僕もできる限り頑張るし、その姿勢を崩さない限り彼女は好意的に接してくれる。今のところは良い関係であると言えると思う。でもたまに無茶も言ってくる。「次に面接の決まった会社は元気がいい人を好むので、限りなく明るいキャラクターを演じてください」彼女は僕がちょっと気合を入れるとアンタッチャブルのザキヤマのように底抜けに明るい人間になれるとでも思っているのだろうか。「善処します、これでも落研だったので掴みは心得ていますから」そう僕は強がって見せたが、それに対して彼女は何も言わなかった。何か見抜かれたのかもしれない。

 

☆☆☆

 

悪い知らせというのは、まあ書類選考に落ちましたというのがほとんどで、残りは「あなたに紹介できる求人が減ってきたので、条件を緩和して応募しましょう」という通告だ。僕は前職でIT業界のシステムエンジニアとして2年半、営業職を1年ほど経験している。したがって次の仕事も経験を生かして同業種の営業マンを志したのだが、書類選考でほとんど落ちてしまい範囲を広げざるを得ない状況になった。

 

「売るものが変わりますが、同じ営業職ですから」

 

と言って転職エージェントはざっくばらんに求人情報を送ってくるようになった。未経験業種の営業というのは僕にアドバンテージがない。はっきり言って新卒と同じような状況で、さらに歳をとった状態で仕事に食らいついて頑張る必要がある。そのプレッシャーに僕が耐えながら仕事ができるか。自分がITシステムを売るのではなく、自動車部品や不動産を売っていることをイメージできるか...そんなことを考えながら転職活動をしている。

 

「とりあえず応募だけしてみましょう。選考に進み、内定が出始めたら選ぶ感じでやっていきましょう。選考の数が少ないと、進むものも進みませんから」

 

そんな風にエージェントは宣うのだけど、僕としては気の進まない選択だった。就職するつもりのない会社の選考を受けることは僕自身の時間を無駄にするし、選考をしてくださる採用担当者の時間も無駄にすることになる。それだけは避けたいとは思っている。なんだか就職を早く決めて欲しいエージェントと、良い人材が欲しいと思っている企業との間で板挟みになっている感じがして、息苦しい。少しだけ、泣きたい気分になった。

 

☆☆☆

 

午後の3時頃に街を散歩していたら、小学生の群れに巻き込まれた。たまたま小学校の前を歩いていたせいで、下校時間の小学生が大量に走り回っていて、僕の周りを取り囲む形になった。男の子が何人か喧嘩していて、一人が泣いていた。なんだか僕も泣きたい気分だった。泣いている男の子は全身全霊で自分が悲しいということを表現しているように見えた。僕もそんな風に泣けたら転職に伴うストレスが発散されるだろうなと思った。でも僕は無職の25歳で、彼は小学生だ。僕は小学生のように泣き叫ぶことはできるが、小学生になることはできない。その事実を僕に突きつけるような光景だった。僕は彼に心の中でエールを送りながら、でも内心その若さを羨ましく思いながら、ゆっくりとまた歩くことに集中し始めた。